パパ頭の日々のつぶやき

妻子との何気ない日常を漫画にしてます!

教員の働き方に関する質問への回答

2月19日(土)に実施いたしましたCALL4主催のトークライブ、「教育の未来を変える私たちのアクション」についてご視聴くださりありがとうございます!

 

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ライブの質問コーナーにて、時間の関係などでお答えしきれなかった質問について、こちらから回答いたします。

 

パパ頭さんに質問です。育児漫画刊行に対し教育委員会から許可が降りなかったということですが、教育漫画なら兼業許可が降りたということはありそうでしょうか?教育公務員には教育関連の書籍を刊行されている方がいると思うのですが、不許可の理由が「漫画」というジャンルにあったのか「育児」というテーマにあったのか分かれば知りたいです
訴訟にて被告は、不許可の理由として「企画意図や報酬などの判断材料に不足があったこと」を指摘しており(原告としては、指摘を受けた部分も含め、判断に必要な情報は全て伝えてあったと反論しています)、兼業の基準についての言及を避けています。ご質問いただいたことは、私自身も気になるところなのですが、正対するお答えはいただけていない状況です。ちなみに、私が兼業を申請した際に根拠とした地方公務員法、および兼業に関する都の内規には、書籍出版の際に教育との関連性や特定の表現方法(文章ならば認められるが、漫画では認められない等)を要件とするような具体的な記述はありません。そのため、申請をする側、特にこれまで前例のなかったようなものに挑戦してみようとする側からすると、可否の基準を判断しづらい状況にあります。

 

教員の勤務実態の過酷さを報道でよく目にするようになりました。実際、現場で働いておられる皆様は、なにかポジティブな変化の兆しを感じることはありますか?(働く人の意識の変化など…) 】
以前までは、過酷な労働状況にあっても、聖職者としての仕事に対して誇りを感じ、ともすると残業すればするほど自信を深めてしまう、「生徒のためならいくらでも頑張れる、それでこそ教員だ…!」といった感覚に陥ってしまう人が多かったように思いますが、このところは意識に変化が生じ、職務に誇りを持ちながらも「教員だからっていくらでも出来るわけじゃない、どこかで線を引く必要がある」と立ち止まって考える人が増えてきたように感じます。職員会議などの場面においても、以前までだったら管理職から指示があった時点で黙って受け入れていたところを、あえて挙手して職務の必要性や命令の根拠などを質問し、確認したり正したりしようとする人も見られるようになってきました。そうした変化を受けて管理職の側も、教員の働き方について緊張感をもって対応する様子が少しずつではあるものの見られるようになってきています。過酷な労働状況を見直すとともに、ただ単に負担を減らすことを目標とするのでなく、教員として本当に必要な仕事は何なのか、求められている役割とは何かを改めて考えようとする雰囲気が出来あがってきていると思います。こうした問題を考えていく上では、教員や専門家だけでなく、むしろそれ以外の人たちも含めて一緒に考えることが大切だと感じます。教育は学校の中で完結しないし、完結させるべきではないと考えるからです。

 

教員が担う業務内容が多すぎることが問題とされていますが、併せて、教員(先生)に対し「業務」という領分を超えた、奉仕や自己犠牲を求めすぎているのではと思うことがあります。「業務」というところは理解し、明確な業務範囲と就労時間があるといいなと思うのですが、実際、教員の業務規定、雇用契約内容はどうなってるのでしょうか
業務規定はある程度決められているものの、非常に不明瞭な部分が少なくない、加えて現実との間に大きな乖離がある状態になっていると感じます。教員の働き方を改善していく上で、それらを明確に示していくことは必要かつ重要なことであると考えますし、現実との乖離を埋める体制の見直しが求められると思います。例えばですが、業務規定上は、各教員に対して昼休みの時間が設定されていますが、実際には昼に休みなどほぼ取れません。小学校なら給食時の指導でつきっきりになるでしょうし、中学校や、あるいは高校ですら、委員会、補講、昼練など、ありとあらゆるイベントが勃発して昼食をとることすらままならない。結局放課後まで間ができなくて15時ごろにかっこむようにご飯を食べる、なんてことも珍しくありません。規定を明確化していくことでも大切ですが、奉仕や自己犠牲を伴うことない形でそれを遵守するのであれば、抜本的な体制の見直しは避けて通れないように思います。見直しが必要なポイントについては、あげていると収拾がつかなくなってしまうので具体例は一つだけにしておきますが、例えば部活動。現状では、積極的に活動をしている部活の主顧問に命じられた時点で、もはや業務規定もへったくれもありません。朝は就業開始1時間前には来なければいけなくなり、昼休みもほぼなし、放課後も18時くらいまではかかり(18時ならマシな方かも…)、かつ土日もそこそこの頻度で潰れるでしょう(その際の日当は数千円です)。部活動が悪いと論じたいわけではなく、それを採用するならば、規定をしっかり定めた上で、誰が担当になったとしても規定通り運営できる体制の構築が必要だと思う。それができないとしたら、結局どこかで自己犠牲が発生することになると思います。

 

パパ頭さんの漫画をいつも読んでいます。それでふと気になったのですが、教員は男女関わらず産休•育休はとりやすい環境•雰囲気にありますか?もしくは、他業種でもそうであるように「職場による」感じでしょうか?
周囲の教員の話を聞く限り、職場による違いはそこそこ大きいようです。私の場合は、理解ある同僚および管理職に恵まれ、スムーズに取得させていただくことができました。職場の違いは他業種と同様かもしれませんが、教員の場合特殊なのが、教科による違いです。英語や数学など、教員の母数の多い教科の場合、育休の代替教員も見つかりやすく、比較的速やかに事が運ぶ傾向があります。一方、教員数が少ない教科ですと、このあたりで思わぬ苦労があるかもしれません。実は私自身、公民科の倫理専門なのですが、このタイプはニッチでして該当する教員が多くありません。そのため、育休自体は取得できたものの、その期間は授業のない夏休みと、倫理の授業が終わり現代社会の授業のみとなった三学期に限られました(現代社会や政経も代替の教員を見つけづらいのですが、倫理はそれ以上に数が少ない)。ちなみに、万が一代替の教員が見つからなかったとしても、育休自体は権利ですので取得はできます。ただその場合、残った教員が授業を受け持たなければならなくなります。すると残った教員的には単純な業務量増大になりますので、恨みを買いかねません。加えてこれがニッチ教科であった場合は更に悲惨なことになります。例えば倫理の場合、専門の教員は各学校に多くて1人、大抵は0人です。仮に私が、代替が見つからぬ状態で、かつ倫理の授業がある時期に育休を取得してしまうと、免許こそあれど倫理なんて教えたことない、全くの専門外の先生が、無理くり倫理を受け持たされることになるわけです。これは教員にとっても生徒にとってもなかなかの地獄であり、恨みを買うでは済まないことになりかねません。そういった意味では育休自体は取れましたが、まったく制限がなかったわけではないかもしれません。

 

パパ頭さんと同い年の娘がいる中学校教諭です。いつも楽しく拝見しております。田中まさおさんの裁判にも注目していたので、対談が聞けて嬉しいです。質問です。今後、絵本のコンクールに応募しようと考えています。教諭がコンクールに応募して賞金などを得ても大丈夫ですか?またデザインフェスタなどの出品も兼業扱いになるのでしょうか?
企画室に確認していただくのが良いかと思います。実は私自身、コンクールへの応募は検討したことがあり、企画室にも確認してみたことがあるのですが、その時にはすでに訴訟関係がスタートしていたこともあり、私への警戒が高まっていたこともあったのかもしれません、あまり明確なお答えはいただけませんでした。法律を読む限りは、いわゆる兼業にはあたらないように思うのですが、後から痛くもない腹をさぐられたり、何か指摘を受けてしまったりするのを避けるためには、事前に一度確認してから進めた方が良いように思います。

 

こんにちは。18年目の小学校教諭です。パパ頭さんのマンガをいつも楽しく拝見しております。私はただ今3人目の育休中です。12年前に1人目を出産する際、なかなか後を引き継ぐ講師の先生が見つからず大変でしたが、12年経った今回も同じ状況でした。7年前に2人目を出産する際はついに見つからず、校内で調整し、なんとか引き継ぎましたが…非常に申し訳ない気持ちになりました。たまたま、勤務していた校がこのような状況だっただけなのか…?みなさんは、同じような状況を経験されたことがありますか?職場は、産育休をとることに関して嫌な雰囲気は全くなかったので大変ありがたく感じています。しかし、結果として現場の先生の負担が増えるのも事実です。産育休時だけでなく、普段から人手不足は感じています。この人手不足を解消するために、何ができるのでしょうか…
二つ上の質問に対する回答に、私の育休取得時の状況を書きましたので、読んでみていただけたら幸いです。小学校と高校とでは少し性質に違いがあるかもわかりませんが、人手不足という点に関しては共通していると感じます。問題の原因は様々考えられるものの、教員志望者が減少している状況を私は危惧しています。私見ですが、教育という仕事そのものが持っている魅力は、どんな時代どんな場所においても、ある程度変わらずに存在しているように思います。にも関わらず志望者が減っている、それは教員という仕事そのものの魅力の問題ではなく、条件の問題が大きいように思います。私は人手不足の解消のために、教員という仕事の条件をもっと良くしていきたいと考えています。そのための一つのアプローチとして、働き方の選択肢を広げたい、教員の活動が学校内で完結することなく、学校外の社会とのアクセスを確保することを目指しています。

 

​なぜ生徒を監視する先生が増えている傾向があるのだろう?
原因は複合的かと思いますが、思いついたところを二点ほど書きます。まず一点目は、教員の日々の業務量が増加傾向にあり、精神的にも時間的にも余裕を失っているからではないかと思います。例えば生徒に書類を提出させるとして、それが期日通りにあがってこなかった際に、業務に余裕があれば、何故提出できなかったのかヒアリングを行い、各個人の課題に応じた対応を取ることができるかもしれません。しかし余裕がないとそこまで丁寧に寄り添うことができず、とにかくだすよう催促するだけに終始してしまいがちです。日々こなさなければならない業務が増えるほどに、生徒に手をかける余裕を失い、指示通りに動くよう監視を強めていくことになるのではないでしょうか。二点目は、地域社会からの過剰な期待があるように思います。子供というのは様々な失敗を通じて経験を積み重ね、それを糧に成長していく存在です。失敗は成功のもとであり、教育においては失敗に寄り添いながら見守る姿勢、ある程度は待つことも重要だと思います。しかし誰もが同じように見守る姿勢でいてくれるとは限りません。時に学校は、地域社会からの厳しい批判にさらされることがあります。それは学校が見落としてしまっていた大切な気付きを与えてくれることも少なくなく非常に重要なものですが、中には寛容さに欠ける心無いものも含まれます。合唱の練習や部活動での掛け声がうるさいと連日にわたってクレームの電話が入る、といったことがあったりするのです。明らかに悪質なものであれば抗議しますが、実際には「うちの生徒にも多少非があったかもだけど、何もそこまで言わなくても…」といったような微妙なものがほとんどです。学校は地域社会の理解の上に運営されています。関係性の悪化は本意ではありません。そのバランスは難しいですが、余計なアクシデントは避けたいという思いから、生徒に対する監視が強まることはあるように思います。

 

労働時間内でも外でも「もっと自由に」なったら、どんな教育・どんな活動をしたいのか、できるのか、問題が改善されることでどんな未来を期待できるのか、前向きな可能性をぜひ原告のお二人からお聞きしたいです!
「もっと自由に」なることで生じる変化は様々あるかと思いますが、ここでは兼業という観点からお答えします。私は兼業を通じ、教員の活動の幅を拡大していくことで、教育現場に様々なプラスの効果を発揮できると考えています。例えば現状、教員の活動は学校内で完結しがちであり、教員が学校外の世界に触れる機会は少ない。結果として、教員が子供たちに提供できる教育の幅も狭くなってしまっているのではないかと感じます。私自身、生徒たちに社会で生きていく力を身に着けてもらいたいと日々努力はしているものの、肝心の自分は学校外の社会での経験に乏しく、ズレが生じているのではないか、必要とされている力を十分に育むことができていないのではないかと心配になることがあります。私は生徒たちに、「学校で学んでおいて良かった」「あの経験が活きている」と感じてもらいたい。そのためには、学校外でどんなことが求められているのか、体験を通じて知ることが重要だと思います。兼業は、各教員の自己実現に繋がるだけでなく、その経験は生徒たちに還元されうる。更には学校内外のズレを埋め双方をより有機的に機能させる上でも、意義深いものになるのではないかと考えます。

 

教育を変えていくためのアクションを、教育に関わる人以外に広げていく必要性や、広げていく方法についてお考えがあればお伺いしたいです
私は、学校教育というものは学校内で完結されるべきものではないと考えます。子供たちは私たちの未来であり、教育とはつまり、我々がどんな未来を望むのか、どんなことに価値を置き、どんな社会を構築すべきだと考えているのかを具体化していく行為に他ならないと思います。そのためには、この社会を構成する全ての人間が協力し合って目指すべき方向について一緒に考えていくことが有効ではないでしょうか。現状は、学校内外を繋ぐアクセスポイントが少ないように私には感じられます。兼業はアクセスポイントの一つになるのではないかと私は考えますが、他にももっといい方法があるかもしれません。私自身も意見を発信しつつ、一緒に考えていけたら幸いです。

 

たくさんのご感想ご質問、ありがとうございました!

教員に関するお話も、機会をとらえて今後もしていきたいと考えています!

宜しくお願い致します。