6月24日に、府中市さまよりご依頼をいただき、男性の育休取得や育児経験について、講演をさせていただきました。
その際の様子は以下のサイトから動画を視聴することができます。
よろしければご覧ください。
www.city.fuchu.tokyo.jp
今回は講演会に際していただいた質問のうち、講演内でお話しできなかったことを中心に回答してみたいと思います。
根の深い問いかけも多く、上手に答えきれていないものもあるかもしれませんがご容赦ください。
結構な長文になってしまいましたので、目次を作ってみました。
気になる項目を選んでいただくと読みやすいと思います。
【 パパの育児参加を促すために、どのように働きがけたら良いと思いますか? 】
本当は男女隔てなく協力して育児に当たるというのが理想であり、一方がもう一方に対してその対応に気を遣うというのは、そもそもが苦しい状況だと思いますが、考えてみます!
個人的にはパパの得意なことや好きなことから優先的に育児や家事を任せていき、少しずつ分業体制を整えていくのがベターかなと思います。
例えば、料理が得意だというなら献立を任せてみる、掃除が好きなら子の就寝後に部屋の片付けをしたり掃除機をかけるのを習慣にしてもらう、肌が強いなら子のお風呂や洗い物などの担当になってもらう等。
もしも得意なことも好きなことも何もないという場合は、比較的容易なものやルーチン化しやすいものを任せてみるのも一案かもしれません。
例えば、洗濯や翌日の保育園の準備など、業務内容を覚えるまでは少し混乱もあるかもしれませんが、一度覚えてしまえばある程度同じようにこなせるのではないかと思います。
最初のうちはこなすだけで精一杯かもしれませんが、少しずつ役割を通じて子供の様子も見るように促してあげると尚良いように思います。
例えば、ただ食事を作るだけでなく、子供がどんなものが好きでどんな風に調理すれば嫌いな食材でも食べてくれるのかを考えてもらうとか。
ただ洗濯をするのではなく、服のサイズや種類をチェックしてもらって、これからの季節どんな服が必要になるのか、衣替えはどのタイミングでするべきか考えてもらう等。
もしもパートナーから子供目線の提案、例えばあの子はちくわが好きだからお弁当に入れてあげようとか、夏場は肌着を多めに買っておこう、といった声がでてきた時には積極的に拾ってもらって、夫婦間でコミュニケーションがとれるようになると、育児の負担感は減り楽しみは増していくのではないかと思います。
【 家事と育児の両立で意識していることは何ですか? 】
パートナーとの連携はお互い常に意識しています。
日によって必要となる役割は様々ですので、果たすべき役割をできるだけ正確に把握するため、事前にコミュニケーションを取り、子供の動きを中心としてその日お互いがどんな一日を過ごす予定なのか、共有するようにしています。
例えば、幼稚園があり、かつ日中妻にも用事があって、しかも降園後は習い事がある等、ほとんど時間的余裕がないことが事前にわかっている場合、私の役割として考えられるのは、前日に掃除や洗濯物を済ませておく、簡単に調理できるような献立を考える、あるいは食材を予め買っておく、仕事帰りに夕食を買って帰る等、ある程度絞られてきます。
何をどう分担してその日を過ごすか、パズルのピースのようにでこぼこしている互いの予定やスキルを事前に把握して、うまく組み合うように調整しておくことで、負担を減らすように心がけています。
【 育休をもっと取りやすくするために必要なことは何だと思いますか? 】
様々な要素があるとは思いますが、「育休に対する理解を深めること」と「育休が取れるだけの経済的な余裕をつくりだすこと」この2点は特に重要だと思います。
これは何も各個人のようなミクロなレベルだけでなく、むしろ社会全体のようなマクロなレベルでも必要になると考えます。
命を生み出すという行為や育児という営みをどのようなものとして捉えるかという価値観に関わる抽象的な部分から、育児にどれくらいの負担がかかりどのように取り組む必要があるのかという具体的な部分まで、十分に学んでいくことで育休という制度に対する理解が深まる。
他方、理解があったとしても経済的な余裕がないと、取りたくても(取らせてあげたくても)取れないという結論になりかねません。
一朝一夕にできることではないかもしれませんが、この2つの要素を満たしていくことが、育休取得という結果に結びついていくように思います。
【 本業と副業の両立で意識していることは何ですか? 】
両者が相互に良い影響を与えあうような活動やバランスを大切にしています。
例えば今回の講演は、私の教師としてのスキルを発揮する絶好の機会であると同時に、男女共同参画について自治体の方から具体的な取り組みを学ぶチャンスでもあり、日々の授業にも還元できるものでした。
私の本業は教員ですが、副業として漫画を描き、講演をし、コラムを書かせていただくこともある、そのどれもが互いに影響を与えあっています。
本業の経験が副業に活かされ、副業の経験が本業にも活かされる形が理想だと思う。
副業の経験を個人の自己実現に留めず、教育活動という形で学校に還元させることができる点が、教員が副業をすることの意義の1つだと考えています。
【 一人で育児していく上で、あれば助かるサービスはありますか? 】
いわゆるワンオペの状態をイメージすると、単純に業務量が多すぎて一日がまわらない、子供の心に寄り添うような余裕がまったく生じないような状態に陥ることが予想されます。
個人的には親じゃなくてもできる、誰でもできるようなことがあれば、そのあたりを中心にサービス利用で埋め合わせていくのが良いのかなと思います。
となるとまず思いつくのが家事の代行。
具体的には部屋を掃除してもらうとか、一週間分の料理を作ってもらう等、こういったサービスを行政がサポートしてくれている自治体もあると聞きますが、利用してみるのも良いかもしれません。
【 育休取得前に準備しておくと良いと思うこと 】
各種行政サービスは一通りチェックしておいても良いかなと思います。
自治体によっても取り組みは違うと思いますが、思わぬ便利施設やサービスがあるかもしれません。
当事者になってみないと視界に入ってこないかもしれませんが、事前に知っておけると有利だと思います。
夫婦間で出産後の生活について、できるだけ具体的に場面をイメージしてコミュニケーションをとっておくことも大事だと思います。
例えば子供が急に高熱を出したとして、誰がどこにどんな手段で連れていくのか、電話で相談するとしてもどこにかけるのか、病院の場所や相談窓口を調べておくだけでも対応に大きな違いが生じると思います。
これは何も緊急時だけでなく通常時の生活においても同様です。
例えば夜の授乳はどうするのか、完母体勢でいくのか、夜だけは粉ミルクにして妻にはしっかり休んでもらうのか、はたまた日中に搾乳しておいたものを冷蔵して夜に使用するのか。
やってみないとわからないことも多いですが、仮に予定が変更されるとしても、事前のコミュニケーションは双方の納得に繋がり、ひいては夫婦間の足並みに直結するように思います。
最後に、これは個人的に感じたことですが、もっと早く家電を充実させておけば良かったなと思います。
例えば我が家では今ホットクックという家電が活躍しているのですが、もっと早く買っておけば良かった。
というのも、これを利用すると離乳食を比較的手軽にたくさん作ることができるんです。
当時は全て鍋やレンジで作っていたのですが、手間がかかってしょうがありませんでした。
どうせ買うなら、いっそ早めに用意しておけば良かったです。
我が家にはスペースの都合上置けないのですが、乾燥機つき洗濯機の評判もよく聞きます。
育児中は洗濯物が増えますし、一つ一つ干して取り込む時間的余裕も厳しい。
家電で楽できるとしたら、利用しない手はないと思います。
ちょっと高めなものもありますが、家電は比較的コスパに見合うというか、投資しがいのある分野だと感じています。
【 子育てをする中で子供に「こうなって欲しい」などといった願いはありますか? 】
自分なりの人生を自分なりの方法で楽しんでもらえたらと思っています。
自分を愛し、他者を愛してほしい。
そのための精神性やスキルを身につけていってもらえたら嬉しいです。
【 育児も仕事も楽しむために大切なことは何だと思いますか? 】
主体性が大切だと考えています。
育児も仕事も、私自身が人生の中で選択してきたものです。
この「自分で選んだものである」という意識の中に、私は誇りや自信を見いだしており、これがやりがいや楽しみの源泉になっていると感じます。
仕事に行きたくない日もありますし育児に負担を感じる日もありますが、仮にうまくいかないことがあったとしても、その原因は環境や条件の方にあり、それらは改善することの出来るものだと信じています。
いずれの営みも意義深いものだという確信があり、それを選択したことに対して納得のような感情が私にはあるのだと思います。
【 一番幸せを感じる時間はどんな時ですか? 】
子の就寝後、妻と一日を振り返ってお話している時に特に幸せを感じます。
かけがえのないものを介して、心を通じ合わせることができているような感覚を覚えるからです。
私があまりにもこの時間を好むせいで、布団に入ってからも会話が終わらず、就寝時間が遅れがちになってしまうのが難点です。
【 子供に注意するときに気をつけていることはありますか? 】
「注意すること」と「自分の感情を処理すること」を混同しないように気をつけています。
例えば子供が何か良くないふるまいをした際に、それを注意して望ましい行為を示すことは必要ですが、そのふるまいに対してこちらがイライラした態度を示したり、とげとげしい言葉をかけることは必要ないどころかむしろ逆効果にすらなりえます。
実際の場面においてはついつい怒りのような感情が沸いてきて、その気持ちが先行するような形で指導に入ってしまいそうになることも少なくないですが、できる限りそこは区別するように気をつけています。
自分の感情を否定することはありませんが、子供にぶつけるのもお門違いです。
それはそれとして別の手段で晴らすように心がけています。
【 教員の多忙化を踏まえて、働き方のビジョンはありますか? 】
私自身の働き方を見直すことも大切ですが、教員の多忙化の現状は個人の努力では解決しきれない部分も多いと感じています。
内容面だけでなく、そもそものシステム面から見直していくべき箇所が多いように思いますので、自分の手の届く範囲で改善のためのアプローチを続けていきたいと考えています。
具体的には、副業を中心とした教員の柔軟な働き方の提案や実践、長時間労働是正を目的とした訴訟への支援、外部人材活用のためのNPO法人立ち上げに向けた活動など、微力ながら進めているところです。
【 子供にきつく叱ったりしてしまった時、どんな風にフォローしていますか? 】
自分の言い方や向き合い方に良くない点があった時には、すぐに謝るようにしています。
その際は、何がどう良くなかったのか、できるだけ具体的にかつ簡潔に、子供に伝わるような表現を心がけています。
こちらからの言葉に対し、子供からも何か言葉がでてきた時には、傾聴に徹するようにしています。
情けない話ですが、私は望ましくない関わり方をしてしまうことが少なくありません。
そのため比較的よく謝ってしまっているかもしれません。
謝れば済むという問題ではなく、謝らずとも最初から望ましい関わり方ができるよう努力しないといけないのですが、それでも尚やってしまった時には、率直に謝罪するようにしています。
【 子供に対し十分に労力をかけてあげられるようになるためには社会全体がどのような考え方になるべきだと思いますか? 】
現状は、子育てをしている人たちとそうでない人たちとが、しばしば対立してしまう状況があるように思います。
例えば職場にて誰かが育休を取得すると、その分のしわ寄せが残った人たちに回っていってしまう等、こうした状況では融和的に未来を描いていくことは難しいでしょう。
本来、子供に力を注ぐことは、育児をしている人たちにとってはもちろん、そうでない人たちにとっても益のある選択であるはずです。
極端な話、このまま少子化が進めばやがては税収が落ち込み、社会保障を初めてとして多くのシステムが十分には機能しなくなるでしょう。
そうなれば国民全体にとって不利益が生じることになります。
直接的に育児に関わっているか否かに関わらず、それぞれの立場の人たちがそれぞれに役割を発揮できるよう、融和的な策を考えていくことが大切だと感じます。
子供は親だけでなく、社会全体で育てていくものです。
具体的な策が思い浮かばず不甲斐ないのですが、不公平感や贔屓感の少ない、できるだけ多くの人が必要性を実感できるような、当事者意識を持てるような方向性が望ましいと思います。
【 パートナーから言われて辛かった、納得できないような言葉をかけられたことはありますか? 】
厳しい言葉をかけられてしまうことがなかったわけではないのですが、納得できないような理不尽な言葉をかけられたことはないように思います。
というのも、基本的に妻は私よりずっと賢い人であり、言葉を用いる際にはそれがどんな風に相手に届くか、私より遙かに深く考えを巡らせています。
私が考える程度のことは、言葉を発する前から妻は予測しているわけです。
その上であえて厳しい言葉をかけられることがあるとすれば、当然そこにはそういう表現を用いるに至った何かしらの考えや意図があるということになります。
厳しい言葉自体は、私に一時的なショックを与えるかもしれません。
しかし私はいつまでもショックを受けている場合ではありません。
一刻も早く、その意図をくみ取り、望ましい解答を示す必要があるからです。
私の能力に対する妻の見積もりは時折ゾッとする程に正確です。
私が努力しても尚解答を示せないような無理難題はそもそも提示しません。
厳しい言葉をかけられる時、私は試されていると感じます。
【 夫婦が同時に余裕を失ってしまった時はどのように打開していますか? 】
ひたすらサボるようにしています。
料理は外で買ってくる、掃除はもう今日はしない、外で遊ぶのはやめて室内で映画を見る等、極力頭と体を使わずに済むように過ごします。
その際は子供たちに対し、自分たちが余裕を失っている現状やその原因について、できるだけわかりやすく伝えるようにしています。
子供たちからは不満の声があがることもありますが「自分で自分を楽しませるために、何かいい方法ない?」といった投げかけをしてみると、それなりに工夫して過ごしてくれたりしています。
【 料理などの家事は子供が生まれる以前より一通りできましたか? 】
子供が生まれる頃にはある程度できるようになっていましたが、妻と同棲を始めた頃はほとんど何もできませんでした。
というのも私はそれまでずっと親のすねをかじって生きてきたため、生活能力がまったくなかったのです。
ただそれは妻もほとんど同じ状況でした。
料理も洗濯も掃除も、ほとんどやったことがない2人が同棲を始めたわけですから、当初はなかなかにひどいことになりました。
ただ逆に2人とも同じように出来なかったからこそ、互いに協力し合って少しずつ能力を磨いていくことができました。
結果として、子供が生まれる頃には2人ともある程度の家事は一通りできるようになっていました!
【 子育てに関する情報は主にどこから収集していますか? 】
ネットから情報を得ることもありますが不確定なものも多いため、複数サイトを当たるようにしたり、保育園や幼稚園の先生や医者など専門家に確認するようにしています。
先輩ママパパに教えてもらうこともあります。
【 イヤイヤ期の子供に対する接し方で気をつけたことはありますか? 】
1人でずっと向き合っているとどうしてもイライラしてしまいがちなので、妻と協力して精神的に余裕がある方が前にでるようにしていました。
例えばご飯の際には、余裕のない方が調理を担当し、余裕のある方が食事の補助をする等、その時々で前衛後衛を切り替えるようにしていました。
【 職場の条件が全て整っていたらとしたらどれくらい育休を希望したと思いますか? 】
少なくとも1年は取得したと思います。
期末勤勉手当が得られないのは大きいですが、もろもろの補助のおかげで約1年間は勤務時とそんなに変わらない収入を得ることができ、経済的に安定した状態で育児に向き合えると思うからです。
【 家族の好きなところを教えてください 】
これはもう書き出したらきりがなくなってしまう恐れがありますので簡潔にまとめたいと思います!
妻は、人間的にとても情が厚く、それでいて非常に聡明な一面を持っており、そういった点を特に尊敬しています。
妻のことが好きであると同時に、妻のことを好きでいる自分のことも好きです。
短い言葉でまとめるのは難しいですが、一緒にいると誇らしい気持ちになるというか、何かすごくいい流れの中にいるような気持ちになれます。
にには、とにかく穏やかな人間で、かつとても賢いです。
物事の捉え方に温かみがあり、何かを表現する時にもやわらかい言葉を選びます。
心根の優しいところが私は大好きです。
ととは、とても明るい人間で、いつでも自由に気持ちよく生きています。
ポジティブな感情はもちろん、ネガティブな感情も拒むことなく、そのまま受け止めてそのまま表現する。
どんな時も自分らしさを見失わないところを私は気に入っています。
たくさんのご質問ありがとうございます!
私も自分の考えを深めたり整理したりすることができ、大変助かりました!
また何かいただくことがございましたら、また回答させていただきます!