パパ頭の日々のつぶやき

妻子との何気ない日常を漫画にしてます!

思い出したもの

先日
仕事の出張中、旅館に宿泊していた時のこと。
年の近い同僚と同室となり、夜、明かりを落とした後、何気ない会話をしていた。
初めは仕事の話をしていたのだが、やがて趣味の話となった。
私はこんな話をした。
「私はゲームが趣味なんだけどね、就職して間もない頃、RPGをやっていた時、ふと思ったんだ。
『私今、頑張ってゲームしてる』…ってね
いやもちろん好きで遊んでるんだよ?
でもどこかちょっと負担を感じてるというか、夢中になりきれてない。
やらなきゃいいじゃんって話ではあるんだけど、とにかく何か少し無理して遊んでいるような、そんな感覚に襲われたんだ」

同僚は静かに話を聞きながら、少し考えた後、こう返してくれた。
「話を聞いていて思い出しました。
俺には漫画を読む趣味があるんだけど、最近読んでいて思うんです。
『ページをめくるのがめんどくさい』
だったら読むなよって思われるかもしれない。
いや読みたいには読みたいんです。
でも昔と感覚が違う。
以前は食い入るように読んで、残りのページが少なくなってくると、もったいなくなるような気持ちがあったのに、それが今はないんですよ」

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わかりみの深い話だ。
いったい何が変わってしまったのだろうか。
同僚は続けた。
「ゲームも大好きだったんです。
何なら今だってやりたいと思う。
でも、アレがでたら買おう、コレがでたら買おう、なんて思ったまま結局買ってない。
昔は発売日が待ち遠しかった。
買うやいなや夢中になってやってたのに…モンスターファームとか」
私の体がピクリと反応する。
無視できないワードが飛び出した。
モンスターファーム、もはや説明不要の名作である。
私は本題を放り出してくらいついた。
「懐かしいな!
家中のCDかき集めて、モンスター召喚してたわ!」
同僚の声色が変わる。
「わかるんですか!?
モンスターファーム!」
「もちろんだよ!」
そこからはもう火がついたようであった。
コルトに勧められるがままにドラゴン杯に出場し、ボコボコにされたこと。
大切にしていたモンスターが冒険に出たはいいものの、寿命を知らされることなく死んだこと。
突如ファームが不気味な雰囲気につつまれ、チャッキーが出現したこと。
思い出が次から次へと溢れてくる。

語り合いながら、私は思い出していた。
それはモンスターファームのことではなかった。
あの頃の私には、趣味を共有する仲間がたくさんいた。
学校に行けば、斎藤一牙突が志々雄真に通用しなかったことで盛り上がり、放課後になれば、友達の家に集まって自慢のモンスターで競いあった。
就職してからというもの、同じ趣味をもつ人間はめっきり減ってしまった。
もちろん今でも友達はいる。
お陰様で私は今も趣味を楽しむことができている。
しかしそれは、どこか特別な時間である。
以前はそれが、当たり前だったのだ。
かつての日常は、少しずつ非日常へと押しやられていったように思う。
私はモンスターファームをやっていた。
あのゲームが大好きだった。
でも本当に大好きだったものは…

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明かりを消してから、一時間以上が経っただろうか。
話題は尽きることなく、いつまでも話していられそうなくらいである。
しかし明日も仕事はある。
これ以上付き合わせては流石に迷惑になるだろう。
私は区切りをつけて、今日はもう眠ろうと声をかけた。
布団を深く被ると、忘れていた眠気がこみ上げてくる。
まどろむ意識の中、ぼんやりと思った。
まるであの頃に返ったみたいだったな…

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忘れていた何かを思い出させてくれた同僚に感謝しながら、私は囁いた。
「おやすみ」

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